シリーズ「ユーザー車検で不合格になりやすい箇所」最終回は【下回り編】です
読者の皆さんはクルマの下回りをご覧になったことはありますか?
ユーザー車検などで陸運事務所に検査車両を持ち込みで検査を行う場合は車検コース内での短い時間ですがベテランの検査官が手際よく隅々まで下回りの検査を実施します
今回は日頃あまり見ることのない下回りの不具合を起こしやすい車検時に指摘されやすい箇所を紹介します
ぜひ!車検整備の参考にされてください
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前回までの記事は以下のリンク先になります、まだご覧になっていない方はそちらも参考にされてください
第1回は「ボディ・電気周りとエンジンルーム編」です
以下のページをご覧ください
第2回は「メーター周り・車内編」です
以下のページをご覧ください
第3回は「サイドスリップ・ブレーキ・スピードメーター・ライト・排気ガス測定編」です
以下のページをご覧ください
車検に必要な書類関係については以下のページを参照ください
車検コースの検査の仕方については以下のページを参照ください
ユーザー車検で不合格になりやすい箇所【下回り編】
クルマをリフトアップして下からクルマを見上げると色々な装置やアーム・ロッド・マフラー・ワイヤー・ホース類が取り付けられているのがわかります
それらの装置や部品に重大な損傷や不具合があるとクルマを安全に走行させることができません
クルマの下回りの検査はクルマを安全に走行させる為に支障のない状態に管理されているかを保安基準に沿って検査するものです
車両の下回りの検査
クルマの下回りを一般の方はあまり見ることはないと思います、しかしクルマの点検の主要部分の8割方は下回りの点検といっても差し支えないと言えます
整備士から言わせると、クルマの外回りやエンジンルームを開けて点検してもクルマの総点検箇所の2割程度しか点検していないことになるということです
それほど下回りの点検は重要です
例えばオイル漏れにせよ水漏れにせよ全て重力があるので下に落ちていきますよね、それをエンジンルームを開けて上から見ても点検できる箇所はほんの一部です
ですからクルマを点検する場合にはリフトアップして下からクルマを点検することが非常に重要な作業になってきます
車検前においても出来るだけクルマをリフトアップして点検されることを勧めます
少なくともスタンドをシッカリと4脚設置して点検されることを勧めます
では下回りの車検時に指摘されやすい不具合箇所を見ていきましょう
エンド・アーム類の不具合による不合格
ラックエンド・タイロットエンド・スタビライザーリンク・ストラットバー・ロアアームなどに著しいガタや損傷がないかの検査
特にラックエンドやタイロットエンドのジョイント部はハンドル操作や走行中の衝撃などを受けやすいのでガタが発生しやすくなります
またスタビライザーリンクやロアアームのジョイント部も走行中の衝撃を長期にわたって受けることにより損傷が進みガタが出てきます
上記の箇所はガタの発生のみならずジョイント部のグリース漏れを防ぐ為に覆っているブーツ類も長年の使用による劣化で損傷することがあります
検査においてはこれらの箇所や部品にガタやブーツ類の損傷が見つかると車検は不合格となります
下回りの点検をご自身で行うことができない場合には専門的な知識を持つ業者にお願いされた方が良いでしょう
ドライブシャフトブーツ・ラックエンドブーツ
下回りの検査で不具合のため特に不合格になる確率が高い箇所がドライブシャフトのブーツやステアリングラックエンドブーツです
ドライブシャフトブーツ
ステアリングラックエンドブーツ
過酷な使用で衝撃をうけるドライブシャフトブーツとステアリングラックエンドブーツは他の部品と比べても損傷しやすい箇所になります
車検前にはシッカリと点検しておきたい箇所になります
またロアアームやスタビライザー・ストラットバーなどの著しい損傷・曲がり・取付部のガタなども車検不合格となります
それぞれ左右のタイヤを上下左右に揺すったり動かして各部の接続部やジョイント部にガタや損傷がないか事前にチェックしておきましょう
ショックアブソーバーの不具合
ショックアブソーバーのオイル漏れ・取付部のガタ・ブーツなどの著しい損傷などでも車検不合格になる場合があります
特にショックからオイルやガスが著しく漏れている場合には車検は通りません
- リアショックのオイル漏れ
- オイル漏れが激しくショック本体が漏れたオイルで汚れてしまっています
- このような状態では車に乗っていても船酔いのような状態になります
- 走行安定性やブレーキング時の安定性も悪くなります
- リアショックを新品に交換した状態
- ショックを交換する際には一般的にブーツやマウントなども同時に交換します
- これでユーザ車検も通すことができると同時に安心して車を使用することができます
にじみ程度の状態であれば車検は通りますが、検査前には綺麗に洗浄して検査に挑みましょう
ショックアブソーバーのシャフト部を覆うブーツに関しては検査が厳しいところとそうでない所があるようです
昔、若い頃住んでいた陸運支局では全てのブーツ類の損傷は車検不適合と判定されていましたが
首都圏においてはショックアブソーバーやサイドブレーキのブーツ類に関しては不合格にならない場合も多々あります
※このように判断が検査官によりマチマチになる場合もありますがブーツ類の損傷の判定に関しては寒冷地などの場合はブーツの損傷から水などが装置の内部に侵入して凍ってしまい本来の機能を果たさなくなるために検査判定を厳しくしている場合もあります
※例えばサイドブレーキワイヤのブーツが切れて水分がワイヤー内部に侵入すると寒冷地ではワイヤーが凍ってしまいサイドブレーキが操作できなくなってしまうなどの弊害があるからです
※検査官と判定でトラブルになると言う話を度々耳にすることがありますが彼らはその道のベテランですそのことを頭に入れて検査に挑みましょう
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また判定の1つの根拠としてブーツ内にグリースなどが注入されている箇所に対しては損傷時にグリース類が飛び散るために車検不適合としているものも有ります
いずれにしてもショックアブソーバーやサイドブレーキ類のブーツに関しても内部にゴミや異物が入ることによる二次損傷を防止するためにも修理された方が良いでしょう
プロペラシャフトセンターベアリングの損傷
乗用車などでも2000ccクラスになるとプロペラシャフトの長さが長くなり回転バランスが取れなくなるためにジョイントを挟んで2つに分割して取り付けられています
そのジョイント部分付近にプロペラシャフトセンターベアリングは取り付けられています
センターベアリングは回転の振動を和らげるために中空のブーツを介してボディに取り付けられている為にプロペラシャフトの振動が車内まで入ってくることはありません
※トラックなど車長が長いとセンターサポートベアリングが2カ所になります
処がセンターベアリングの損傷やブーツが損傷すると高速走行時や段差を乗り越えた時に室内に振動や衝撃が伝わってきます
プロペラシャフトセンターベアリング
下回りの検査においてもプロペラシャフトセンターベアリングブーツの損傷は部品内に水などが入りベアリングの損傷や劣化により安全な走行が保たれないということで車検が通らない場合もあります
車検が通る通らないの問題ではなく、走行上、快適で安全な運転ができなくなるのでプロペラシャフトセンターベアリングが損傷している場合には交換しましょう
オイル漏れによる不合格
車検整備時にクルマの下回りを点検するとエンジンやトランスミッション・デフなどのオイル漏れなどの状態も確認できます
これらのエンジンやミッション・デフなどから著しいオイル漏れなどが発生している場合などには車検が不合格となります
特にオイルパンの取り付け面やクランクプーリーの取付部・ミッションにおいてはミッションオイルパンはもちろんのことニュートラルスタートスイッチ・ドリブンギヤの取付部からオイルが漏れやすいです
下回りの洗浄などをして、車検検査時にオイル漏れが確認できなければ車検は通るのですが、クルマの安全な走行を考えた場合には決してお勧めできる行為ではありません
シッカリと修理をされて車検に挑みたいものです
エンジンオイルなどによるにじみ程度であれば車検は問題なく通ります
無理に修理することもなく様子見で日常点検時などにクルマの下にオイル跡などの痕跡がないか確認しましょう
水漏れによる不合格
冷却水がラジエーターやホース類から著しく漏れている場合には車検は通りません
日常点検時にリザーブタンクないの冷却水が適正に管理されているか確認したりクルマの下に水漏れなどの痕跡がないかを常日頃から点検しましょう
冷却水の漏れやすい場所としてラジエーター部・ウォーターポンプの取付部・ヒーターコックの取付部などがあります
丁寧に点検されて車検に挑んでください
燃料漏れ
明らかな燃料漏れも車検は通りません
燃料漏れに関しては匂いなどでも気づくと思いますが、下回りからはエンジンルーム下に燃料漏れの痕跡がないか、燃料タンクのホース類に漏れの痕跡がないかを確認します
ブレーキホース類の不具合による不合格
ブレーキオイルの漏れに関しては勿論、ブレーキホースが劣化して亀裂が入っている状態でも車検は通りません
またブレーキホースを交換してブレーキパイプとの取付部やブレーキキャリパーの取付部などから漏る可能性があります
交換した際などはシッカリと確認検査を行ってください
マフラーの不具合による不合格
マフラー(消音器)に関しても道路運送車両法の保安基準に明記されています
以下のページにマフラーの音量は加速時に76dbなどや取付状態について規定が詳細に記されているので参考にされてください
※道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2019.10.15】別添 112(後付け消音器の技術基準)
https://www.mlit.go.jp/common/001321271.pdf〜国土交通省HP参照
マフラーに穴が開いていたり損傷が激しい場合には車検が通らない場合もあります
騒音問題や排気ガス問題において検査官が保安基準不適格と判定すると不合格となります、著しい不具合がある場合には修理してから車検に挑みましょう
社外品などのマフラーの取付を考えておられる方は最低地上高など詳細の保安基準を確認されてからの方が良いでしょう
まとめ
シリーズでお送りしてきた「車検で不合格になりやすい箇所」最終回は【下回り編】でした
一般の方は中々下回りの点検や修理に関しては対応が難しい部分もあると思います
下回りの点検や修理に関しては業者にお願いするというのも1つの手です、無理をせずユーザー車検に挑んでいただきたいと思います
最後まで読んでいただいてありがとうございます
これから車検を受けようとしている方、日常点検を行おうとしている方々に少しでもお役に立てたなら幸いです
ではまた次回の記事でお会いしましょう