平成24年11月14日〜届出1
プリウス20系を含めた13車種にも及ぶリコール案件が届けられました、又、それぞれの車種において二箇所の不具合があるとの事で2件のリコール案件の届出となります
一件目は、「操縦装置」、もう一件は「ハイブリッドシステム」のリコールです、まず初めに「操縦装置」のリコール案件から解説していきます
また、プリウス以外の車種のリコール対象車両の車体番号も資料として載せておきます、ご自身の車がリコール対象車両になっていないか確認できます
プリウス20 系「舵取り装置のリコール」
発生状況・症状
かじ取装置において、ハンドルとギヤボックスを連結している継手部品(インタミエクステンションシャフト)のギヤボックス側強度が不足しているも のがあるため
低速時にハンドルを強く一杯に切る操作を繰り返すと、継手 部品の連結部にガタが発生することがある。
そのため、そのまま使用を続けると、連結部が摩滅し、かじ取り操作ができなくなるおそれがある
深掘り解説
ハンドルを回転させるとステアリングシャフトやジョイントを介してステアリングラック一体式のギヤボックスに繋がりタイヤを左右に動かすことができるのですが…
ステアリングシャフトとギヤボックスの接続部分のステアリングシャフト側の強度が不足している為に停車時や低速時にハンドルを強く一杯に切る操作を繰り返すと
ステアリングシャフト側の連結部にガタが発生する場合があり、そのまま使用すると連結部が磨耗してハンドル操作が不能になることがあるとの事です
通常、連結部は双方に切り込みがあり、切り込みに合わせて接続後、更にボルトでロックする構造なのですが…強度不足のために繰り返し強い力がかかった場合に
接続部分の部品(インタミエクステンションシャフト)が広がり、切り込み部分が磨耗して、最悪の場合にはハンドル操作が出来なくなるということです
前回の記事でもステアリングラック側のリコールについて紹介しましたが、この部分には非常に大きな力がかかります、部品に少しでも強度不足などがあるとこの様な事態を招きます
また、これ以外のクルマに於いても、上記の様に大きな力がかかる箇所なので、日常点検時には負担を減らすためにもタイヤの空気圧を通常より少し高めに設定し、ハンドル操作においても闇雲に強く一杯に切る操作をできるだけ減らす様に心がけることが大事です
改善の内容
- 全対象車両を点検し、当該継手部品を対策品に交換する。
- 対策済識別〜改善済車両には、下記位置に黄色ペイントを塗布する。
- ※車台番号打刻のハイフン位置下部〜プリウス ウィッシュ アイシス カローラ カローラランクス カローラフィールダー アレックス WiLL VS
- ※エンジンルーム内の左サスペンションタワー前面〜カローラスパシオ
リコール対象〜車種・車体番号
平成24年11月14日〜届出 2
プリウス20系「HVインバータ用電動ウォータポンプのリコール」
プリウスを含む13車種の「舵取り装置」のリコールと同時に届出があった、もう一件の「ハイブリッドシステム」に関するリコール案件を解説していきます
なお、プリウスを含む13車種のハイブリッドシステムに関する、リコール対象車両の車体番号などの確認は上記した資料で確認してください
発生状況・症状
ハイブリッドシステムの電圧変換器(インバータ)用電動ウォータポンプに おいて、コイルの巻き線工程が不適切なためコイル線に傷がついたものがある。
そのため、コイル線の腐食断線によりウォータポンプが停止して警告灯点灯や出力制限走行となる。また、線間ショートした場合には、電源ヒューズが切れて走行不能となるおそれがある。
※インバータ:高電圧の直流を交流に変換する装置
深掘り解説
エンジンルーム内に設置されたハイブリッドシステムは非常に高温になる為に、エンジン側を冷却するシステムとは別にハイブリッドモジュールやインバーターを冷却するために別に冷却系統が設けられています
エンジン系統を冷却するのにはエンジン駆動力を利用したウォーターポンプが使用されていますが、ハイブリッドシステムの冷却には電動式のウォーターポンプが別に取り付けられています
そのウォーターポンプの製造段階の内部のコイルの巻線工程で不適切な作業があった事によりコイルに傷が付いたものがあるとのことで
その傷がついた部分などから腐食や断線によりポンプが停止する事態となり警告灯が点灯しモーター駆動がされず出力制限の走行になってしまうとのこと
更に、線間ショートした場合には、電源ヒューズが切れて走行不能になる場合があるとのことです
ハイブリッドシステム用に使われている電動モーターは、ご覧になった方はおわかりと思いますが…家庭用の水槽用のモーターを少し大きくしたくらいの大きさでこれで大丈夫なんだろうかと思います
内部のコイルの管理をしっかり行うのはもちろんのこと、高温による不具合が多発するハイブリッドシステムの冷却系統を上げるためには、もう少し強力な構造のものの方が良いのではと思います
改善の内容
- 全対象車両の当該ウォータポンプを対策品に交換する。
- 対策済識別〜改善済車両には、下記位置に黄色ペイントを塗布する。
- ※プリウス〜車台番号打刻のハイフン位置下部
- ※エスティマハイブリッド〜エンジンルーム内のダッシュパネル左部
- ※アルファードハイブリッド〜エンジンルーム内の右フロントフェンダーエプロン部
- ※クラウンセダン、TOYOTA FCHV-adv〜エンジンルーム内の右サスペンションタワー上面
令和元年07月24日〜届出
プリウス50系「ブレーキアキュームレータのリコール」
届出内容・症状
電子制御式油圧ブレーキのブレーキブースターポンプにおいて、ポンプモーターの構成部品である、樹脂製ブラシホルダーの整形型が不適切な為に、ブラシとの隙間が小さく
ポンプ作動時に当該ホルダーが熱膨張してブラシが引っ掛かりポンプモーターが、導通不良となるものがある
その為、ポンプモーターが作動せず警告灯が点灯し最悪の場合、倍力作用が損なわれ制動停止距離が延びる恐れがあるとの事
深掘り解説
プリウスには通常の車両に取り付けられているエキゾーストマニホールドからの負圧を利用したブレーキブースターが付いていません
その代わりにブレーキブースターの代わりをするブースターポンプが装着されています、ブースターポンプは電子制御により作動する仕組みになっており
ポンプによりブレーキフルードを加圧させアキュームレータに蓄えておきます、そのブースターポンプの構成部品である樹脂製ブラシホルダーの成形上で不具合がある為に
熱膨張によりブラシとの隙間が小さくなり、ブースターポンプ作動時にブラシが当該ホルダーに引っ掛かり、ポンプモーターが導通不能となるものがあり
その為にポンプモーターが作動しなくなりブレーキ警告灯などが点灯し、最悪の場合、ブレーキ倍力機能が損なわれブレーキ制動距離が伸びる可能性があるということです
現代の車はコスト削減や軽量化の為にプラスチック樹脂などをクルマの部品として多用しています、樹脂部品は熱に弱く、この様に変形をしてリコール対応をしなければならない場合も多々あります
メーカーにおいてはあらゆるコスト削減のみだけを意識してクルマ造りをするのではなく、安全第一の精神を忘れずにクルマの生産に励んでいただきたいと思います
改善の内容
- 全車両、ブレーキブースタポンプを点検し、該当するものは良品と交換する。
- ※対策済識別〜車台番号打刻の左下部に黄色ペイントを塗布する
令和元年12月11日〜届出
プリウス50系「メーターコンピューターのリコール」
届出内容・症状
コンビネーションメータにおいてメータ基板を構成する素子(電子部品)の生産設備の管理が不適切なため、当該素子内部に亀裂が生じているものがあり
そのために使用過程で素子内部の回路が短絡し、速度計や走行距離計等が表示されなくなるおそれがある
深掘り解説
デジタルスピードメーターなどで構成されるコンビネーションメーターのメーター基盤内の電子部品の内部に生産段階での管理が不適切な為に当該電子部品内部に亀裂が生じているものがあり
それが原因でシステムONの状態で使用中に電子部品内部の回路が短結して速度計や走行距離計などが表示されなくなるということです
これと同じ様な症状も営業車のプリウス20でありました
走行中にメーターパネル内の表示が突然、全て消えたとの事で工場に入庫してコンピューター診断機で診断しても故障箇所が特定できずディラーに依頼
ディラーの診断機にて診断の結果、メーターコンピューターの不具合(メーターパネル一体式です)との事でメーターパネルアッセンブリ交換となりました
※プリウス20系なのでリコールにはなりません(有償です)
プリウスのメーターの裏側をご覧になった方はお分かりと思いますが…物凄い電子部品の数です、このリコール案件の様に一箇所でも壊れるとメーターが使えなくなる場合もあります
電子化されたクルマは良い点も多々ありますが…
壊れた場合は高額な修理費がかかります
改善の内容
- 全対象車両、メータ基板の素子の製造番号を点検し、該当する場合はメータ基板を良品と交換する。
- 対策済識別〜改善済車両には、車台番号打刻の末尾右側に黄色ペイントを塗布する
令和2年01月29日〜届出
プリウス50系「座席ベルトのリコール」
発生状況・症状
運転者席シートベルトの非装着時警報装置において、バックル内の警報スイッ チ接点の組付けが不適切なため、シートベルト脱着の繰返しにより接点が異常摩耗してしまう
この事により接点間に摩耗粉が堆積して、そのために接点間が短絡し、シ ートベルトを正しく装着した場合でも警報が解除されないおそれがある。
深掘り解説
シートベルトを「カチャッ!」と差し込む側(バックルと言います)に組み込まれている警告灯スイッチの接点が組み付け不良でシートベルトの脱着を繰り返すことにより接点が異常磨耗して磨耗した粉が接点に蓄積してしまう
その為にシートベルト警告灯の接点が短結してしまい、シートベルトを正しく装着しても警告灯が解除されないことがあるということです
対策処置はバックル内の警報スイッチまたはバックルを良品と交換するとなっていますが、対象車両の方は、バックルを良品と交換してくださいと言ってください
バックル内の警報スイッチだけ交換しても又、壊れる可能性があるのと、交換の際にバックルを傷つけられる可能性があるので上記の処置をしてもらう様に言ってください
改善の内容
- 全対象車両のバックルを点検して該当する場合はバックル内の警報スイッチまたはバックルを良品と交換する
- 対策済識別〜改善済車両には、車台番号打刻の型式5桁目の上側に黄色ペイントを塗布する
自動車の不具合情報ホットライン〜国土交通省
不審な故障や事故などで、メーカーやディラーに相談されても解決できない場合には、国のホットラインを利用することができます
直接にメールや電話での問い合わせができるという仕組みを取っているという事は、万が一のリコールに関する事故や故障により自分はもちろん、周囲の人達をも巻き込む様な悲惨な事態を出来る限り減らすための取り組みの一つと考えても良いと思います
以下に国土交通省の「車の不具合情報ホットライン」のリンクを貼っておきます
まとめ
前回に引き続き、読んで頂きありがとうございます…
プリウスのリコール案件に付いて書いて来ましたが、読者の皆様の中に該当になっている案件はありませんでしたか?
今回紹介したリコール案件はほんの一部です、トヨタプリウスのリコールに関してクルマメーカーから国土交通省に届出が報告された例はまだまだ、沢山あります
クルマのリコールに関しては人命に関わる重大案件となる為に、一部、例外を除いて使用年数・走行距離数に関係なく無償修理が原則です
ご自身が乗られていて、気になるような案件がありましたら、ディラーや国土交通省に遠慮なく相談されてみるのも良いと思います
2回に分けてお届けしたプリウスに関するリコール案件…
プリウス以外の車両に関してもたくさんのリコール案件の報告が出されています、それらに付いてもシリーズ化してわかりやすく記事にまとめていきます
ではまた次回の記事でお会いしましょう