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トヨタ《ヤリス・ヤリスクロス》のリコールに関する解説と対策…インプットダンパーとシートベルト関連の不具合

トヨタ《ヤリス・ヤリスクロス》のリコール関連についての解説
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トヨタ《ヤリス・ヤリスクロス》のリコールに関する解説と対策…インプットダンパーとシートベルト関連の不具合

今回は昨年12月16日にリコールの届出があった、トヨタ《ヤリス・ヤリスクロス》についてリコール内容を解説してみたいと思います

どうぞよろしくお願いします

トヨタ自動車のリコール発表と国交省への届け出内容

トヨタ自動車は2020年12月16日付で自社販売の新規生産車両である《ヤリス・ヤリスクロス》について『ハイブリッド系統とシートベルト関連』に不具合があるとの事でリコールを発表しました

同時に即日、国土交通省のリコール課へ当該車両のリコールに関して届出を行いました

トヨタ自動車が発表したリコールの概要

昨年12月のことなので、当該車両を所有されているユーザの方々は既にリコール内容はご存知で多くの方がリコール対策済みだとは思います

しかしながら中古車等において購入された方、または個人間の取引によって購入された方においては通達が徹底されていない可能性もあります

このようなことにより未だリコール発生を承知していないユーザ、またリコール対策を未だに実施されておられないユーザ様に改めて注意喚起をするとともに、今回のリコールについて一般の方にもわかるように、営業車の元整備管理者としてどのようなリコール内容なのかどの程度の危険性があるのかを解説したいと思います

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ヤリス並びにヤリスクロスに関するリコール内容について

2020年12月に、トヨタ自動車が自社販売車両であるヤリス並びにヤリスクロスに関するリコールを発表し国交省に届出をした内容は2カ所におよび、詳細については以下の通りです

1.不具合の状況

  • (1)ハイブリッドトランスアクスルのインプットダンパにおいて、防錆油の塗布が不適切なため、ダンパの動力伝達部に付着することがあります。そのため、急加速の際、当該ダンパに異常な滑りが生じて警告灯が点灯し、最悪の場合、ハイブリッドシステムが停止するおそれがあります。
  • (2)後部中央座席において、金属製ブラケットの加工が不適切なため、衝突時の衝撃により鋭利な端部でシートベルトが損傷する場合があります。そのため、最悪の場合、シートベルトが破断し、乗員を拘束できなくなるおそれがあります。

2.改善の内容

  • (1)全車両、インプットダンパを良品と交換します。
  • (2)全車両、シートベルトアンカブラケットに保護材を追加します。

国交省へのリコール届け出一覧表

ヤリス・ヤリスクロス《リコール対象車両》国交省ホームページ参照

リコール内容とともに対象車両の年式・型式・車体番号も確認できます

車体番号は車検証で確認できるほか運転席シート手前下のプラスチックのカバーを外すと刻印されていますので確認することができます

リコール対策済み車両はここの車体番号の左側に黄色いペンキを塗布しています

トヨタ自動車から「お客様へのお願い」

ご愛用の皆様には、ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんが、トヨタ販売店からご案内させていただきますので、お早めに、最寄りのご愛用車取り扱い販売店へご来店日時をご予約いただき、点検・修理(無料)をお受けいただきますようお願い申し上げます。

ご愛用の皆様には大変ご迷惑をおかけ致しましたこと、心からお詫び申し上げます。

お車に関するご質問はお近くのトヨタ販売店または、トップページ下部のお客様相談センターへお問い合わせください。

リコール等情報[トヨタ自動車お客様相談センター]

以上が国土交通省リコール課への届出内容となります

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リコールに至るまでの状況

まず初めに《ハイブリッドトランスアクスルのインプットダンパ》のリコールの件からお話しいたします(※シートベルト関連のリコールに関しての解説は今回の記事では省きます)

すでにリコールの内容をご存知でおられる方も多いと思います、またリコール対策を終えられた方もたくさんいると思います

ここでは皆さんにリコールに至るまでの状況、一体、道路上でどのようなことが起こってリコールまで至ったのか

今回のリコールの不具合の状況、危険性はどの程度のものなのか、それらリコールに至るまでの状況を SNS などから拾い上げて皆さんにご紹介したいと思います

このことを紹介することにより今後の運転状況を確認し車のリコールに関しても敏感に感じ取っていただける手助けになるのではと考えます

ソーシャルメディアからの情報

近年ではモバイル通信の発達やソーシャルネットワークの利用者が増えたことにより、このような車のリコールや故障などの情報に関しても、SNSからの情報も増えています

今回も《ヤリス・ヤリスクロス》の不具合に関して、リコールに発展するまでの状況が克明に各方面のSNSから多くの情報が寄せられました。

その一部を紹介します

みんカラからの情報

最初の不具合例は、みんカラの書き込みからです

一般道走行中と思われますが、ヤリスハイブリッド運転中に前方の車が右左折等でいなくなったので、加速しようとアクセルを一気に踏んだら突然「ガリガリっ!」と音がして、警告音が鳴りモニターに「…路肩に寄せて停止してください」という表示がされて停止したとのことです

※この症状の報告から高速走行時の状態に限らず急加速した時に症状が現れたということが覗われます、そして時期も2020年8月という時期でそれから4ヶ月経ってリコールの届出をしたということになります

価格コムレビューからの情報

2件目に紹介する不具合の例は2020年10月ということで私の調べたところでは最初の不具合から2ヶ月経って起こった不具合となります、

オートクルーズで高速道路の追い越し車線を120 km で走行中に前方に軽自動車が侵入し自動ブレーキがかかりスピードが90 km まで減速して軽自動車がまた走行車線に戻ったのでアクセルペダルを一気に踏み込んだら100 km 前後で突然「ハイブリッドシステム故障…等」の表示がモニターに映し出され、同時に警告灯が点灯したとの事

[えぬでぃー]さんが当時の状況を話されていますが急に減速するようなことはなかったようですがモーターとハイブリッド機能は停止してエンジンだけで走行していたとのことです

この事例では一気に速度が落ちた等の記載はありませんが、突然モニターに何種類もの警告表示がされさらに警告灯が点灯したことによりとてもビックリしたことでしょう

3件目に紹介する不具合事例は投稿者[バケラッタ22]さんで11月9日に発生したもので[えぬでぃー]さんの場合と症状が同じで〔パーキングブレーキ異常〕とモニターに警告が出て警告灯が点灯し路肩に停車してサポートに電話したそうです

納車されてから1ヶ月ほどで症状が出たそうです

Twitter からの情報

Twitterに投稿された〔ニーガンさん〕の不具合発生時の体験談で一番、怖い思いをされたのではないかと思います

高速道路を走行中に突然モニターに〔ハイブリッドシステム故障〕と言う警告が表示され

自身の意図しない状態でいきなり速度が100キロから60キロに減速されたと言う事は本当にびっくりされたと思います

「一体何が起こったんだ⁈」と思われたのではないでしょうか

〔プリさん〕の投稿から

走行中に回転数が一気に上がり警告音とともに〔ハイブリッドシステム故障〕と表示されたとのこと

プリさんの場合は2020年11月と言うことで、もうこの時点ではメーカーは症状を把握されていたのではないかと考えます

その状態でユーザーに連絡もなく車を使用させていたのだとすれば…

SNS等への投稿は一次情報と言うことで本当にリアル感があり不具合症状の発生時の車の状況や投稿者さんの心理状況がよくわかります

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リコール内容について解説

ここまでお読みいただいてリコール内容の「シートベルトのリコールに関して」はトヨタ発表の資料と国交省への届出内容で、なんとなくご理解いただけたのではないかと考えますが、ハイブリットシステム関連(※詳しくはトランスアクスル内にあるトルクコンバーターの中の1つの部品です)である「インプットダンパー」のほうに関してはどのような構造でどのような機構なのか、なかなかご理解いただけないのではと思います

インプットダンパーとは

下の説明がインプットダンパーがどこに取り付けられていて、どのような構造で、どう言う役割を担っているのか、わかりやすく解説されてると思います

インプットダンパーはトランスアクスル内にありエンジンの動力をミッションに伝える役目をするトルクコンバーターの中の一つの部品です

見た目もそうですがマニュアルトランスミッション車に装着されているクラッチカバーとクラッチデスクを一体にしたような形をしています

オートマチックトランスミッション車のトルクコンバーターにインプットダンパーが開発され採用されるようになったのは1980年代からです

それまでのオートマチック車に採用されていたトルクコンバーターは流体動力のみだったので燃費も悪く、エンジン性能を100%発揮させるには程遠い状態でした

燃費性能とエンジン性能向上を目的としてオートマチック車でもエンジンとミッションを直結できないかと考えて採用されたのがロックアップ機構というものです

ところがエンジントルクをミッションに直結する(ロックアップ)時の振動や衝撃が強くこれを何とか和らげる方法はないかと考えられたのがインプットダンパーということです

現在ではほとんどのオートマチック車でインプットダンパーが採用されているとのことです

更に、ハイブリット車はエンジンパワーと電気モーターのパワーの2つの動力を組み合わせて車を走らせる構造になっています要するにエンジンパワーだけで走ったり電気モーターだけで走ったり2つ合わせた状態で走ったりすると言うことです

このような走り方をしていると動力を連結したり、切り離したりする際に大きな振動を受けることになります、それらの振動も緩和させる為に〔インプットダンパー〕が取り付けられていると言う事では無いでしょうか

またインプットダンパーはエンジンからのパワーまたは逆に電気モーターからのパワーが上がりすぎた場合、それぞれの部品を保護するために限界を超えるような大きな力がかかった時にスリップするような構造になっています

  • インプットダンパーはトランクアクスル内のトルクコンバーター内にある部品の1つでロックアップ時の衝撃や振動を抑える働きをしています
  • 一定以上の負荷がかかると空転するような構造になっています

今回はインプットダンパーのスリップするディスク部分に予期せぬオイルが塗布されてしまい、本来であればスリップするはずのない速度域・加速時にインプットダンパーのディスク部分がスリップし加速不能になったのでしょう

そして異常を検知したコンピューターがハイブリット警告灯を点灯させ、更にハイブリットシステムを保護するために100キロ近いスピードから急速に60キロ近くまで減速させたと言うことなのでしょう

※また《ヤリスクロス》は車の重量が重くタイヤのころがり抵抗も大きいために、エンジンパワーを無理に車軸に伝えようとすると他のハイブリットシステムやエンジン部品に負担がかかり故障や損傷につながる可能性があるため、それらを防止するための役目もしているのでしょう

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不具合内容と不具合箇所の解説

トルクコンバーター内のインプットダンパーの役目は上記したようにエンジンからトランスミッションに回転力を伝える際に急加速や急減速で急激なトルクがかかった場合にインプットダンパーが衝撃や振動を吸収してなめらかな動力伝達を行うためのものです

ここに、さらなる急加速などで予期せぬ高トルクがかかった場合、またはタイヤなどの回転トルクが高くなりエンジンに高負荷がかかった場合、他の動力伝達装置やエンジンの部品を保護するためにインプットダンパーのディスク部がスリップしてエンジン出力を逃がす役目もしているということなのでしょう

ところが今回のリコールに発展した症状というものは防錆剤として添付したオイルが何かしらの原因によりインプットダンパーのスリップ部分に塗布されてしまい、通常では滑るはずのない速度域、加速域においてスリップし警告灯が点灯する事態となったということでしょう

以上のことをまとめてトラブル発生時の状況を説明すると…

  • ①インプットダンパー周辺の本来であれば塗布されるはずの無い箇所に塗布され、又は規定量をオーバーして塗布された防錆油がインプットダンパー内部のデスク部に入り込む
  • ②100キロ近い高回転域からの追い越しや合流加速時・登坂時などエンジンのトルクが急激に高くなるときに通常では滑るはずのないインプットダンパーのデスク部が侵入したオイルによりスリップする
  • ③エンジン回転とインプットダンパーの回転比の異常を感知したコンピューターがハイブリットの異常を知らせ警告等を点灯させる
  • ④同時にハイブリットシステム保護のためシステムを停止させる
  • ⑤エンジン出力のみとなった車両はハイブリット異常時の規定速度、60キロまで急減速する

以上のような状況になったものと推察されます

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対策とリコール対応の詳細

多くのリコール対象車両がもう既に対策を終了しておられると思いますが、はじめに説明した通り中古車で販売されたものや個人間の売買により未だに告知されていない方々のためと、まだリコール対応を終わってないユーザに対して、改めてもう一度確認しておきます

ハイブリットシステムであるトランクアクスル内の〔インプットダンパーの交換作業〕に関しては作業時間が8時間30分と言われています

早くとも、実質1泊2日の作業時間になると思われます、作業にあたっては予約日時を決めて行われているようです

作業内容としては従来の車のトルクコンバーターやクラッチカバー・クラッチディスク、フライホイールの交換作業と同じような段取りで作業されるものと思われます

少し詳しく話すとフロントの左右サスペンションを脱着しフロントメンバーごと、エンジンとトランスアクスルを1体で車体から分離し、さらにエンジンとトランスアクスルを切り離すとインプットダンパーが見えてきます

リコール作業の中でも重整備となる作業で作業員の方も大変だと思われます、ぜひ安全作業で作業ミスもなく作業を終えられるようにされて下さい

シートベルト関連のリコールに関しては防護材を貼り付ける程度の作業と言うことなのでシート脱着等の作業があったとしても作業時間は30分程度も見れば大丈夫でしょう

いずれにしてもまだリコール対策を終えていない《ヤリス・ヤリスクロス》を所有されているユーザに於いては速やかに、ディーラーなどに連絡を取りリコール対策を終えるようにされてください

※YouTube からの情報ではエンジンを下ろさずにミッションだけを脱着してインプットダンパーを交換された事例もあるようですリコール対応を依頼される場合はディーラーに確認された方が宜しいかと思います

以下に関連動画をリンクさせておきます

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付録〔インプットダンパー開発の裏側〕

インプットダンパーの役割と技術者たちの長年の研究について紹介しています

インプットダンパーの役割をとてもわかりやすく小雑誌風にまとめられています

その1部を左記に紹介します

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まとめ

ヤリス・ヤリスクロスのインプットダンパーとシートベルト関連のリコールについて解説してきました

私も今回このリコール案件の記事を書くにあたってわからないことが多々ありいろいろ調べながら勉強させられました

特にインプットダンパーなるものの役割や構造について詳しく学ぶことができたと思っています

それから今回のリコールにあたってトヨタ自動車やトヨタディーラーの対応はどうだったのかをソーシャルメディア等からの情報をもとにいろいろ考えてみました

元整備管理者として言わせていただくとメーカーであるトヨタ自動車や販売元であるトヨタディーラーの対応はとても早いとは思いませんでした

私が調べた中ではリコール案件の状況はリコールが発表される4ヶ月前にはすでに危険な症状が現れていたと言うことです

もしかしたらもっと早くに今回の症状が現れていた車もあったのではないかと考えます、またSNS等の情報を見る限りでは初期のメーカーやディラーなどのお客様に対する対応はとても良いとは言えないもののように思われます

特に、このような高速走行状態でのトラブルと言うものは非常に危険で物損事故のみならず人身にも危険が及ぶような不具合と考えます

新型車等は特に初期不良が発生しやすいものです、メーカーやディーラーにおいては不具合をユーザから相談された際には、もう少しお客様に対して真剣な対応で接していただきたいとSNSからの情報を見て感じました

車の技術革新は年々進歩しています、昔と違い各装置システムは電動化・コンピュータ化が進み、さらにその先の自動運転・AIシステムの導入などと進化しています

その中で「トラブルや不具合は付き物でしょうがない」と言う考えも持っているのではないかと言われても仕方ない状況です

延長保証やリコール対応があるから大丈夫と言う考えではなく、市場やお客様の声に敏感に真剣に耳を傾けて対応してこそメーカーの信頼を勝ちとりながら技術革新を行っていけるのではないかと考えます

最後まで記事を、お読み頂きありがとうございました

次回の記事でまたお会いしましょう

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